【Vol.19】ハラスメント対策(対応)

2020.06.26 コラム

もし、対策を行っていてもパワハラが原因で被害者がメンタルヘルス不調になった場合、具体的にはどうすれば良いのでしょうか?
医師を2人つける必要があります。
2人ですか?
主治医として心療内科医または精神科医が1人、それとは別に産業医が1人です。
どのように役割分担されるのでしょうか?
主治医は精神疾患の治療を担当します。
目標(end point)は、患者が日常生活を送れるようになることです。
産業医は日常生活が送れるようになった患者が、勤務できるような体制を整えるための助言を会社に対して行うことが任務です。
どのような流れになるのでしょうか?
図①を見てください。(図①参照)

復職後の面談はどれくらい続くのでしょうか?
ケースバイケースですが、通常1年くらいですね。
パワハラの原因はなんでしょうか?
パワハラを許容するような社風ですね。
弱いものいじめを許さないというトップの明確なメッセージと人事部の教育体制が大事です。
トップのメッセージですか?
そもそもいじめが行われるような会社で業績が上がると思いますか?
いいえ…
社員同士が協力し合って始めて、売り上げというのは上がっていくものですよね 。
そうです。
いじめをする暇があったら仕事するべきではないでしょうか?
おっしゃる通りです 。
いじめをするというのは、勤務時間を業務妨害に使っているのですから、重大な職務怠慢に該当します。
それを放置するような企業に将来がないのは明らかではないでしょうか?
・・・
すべてトップの責任ですよ。
厳しいですね・・・
職場でのハラスメント予防にはどのようなことをしたら良いのでしょうか?
職場環境配慮義務という言葉をご存知でしょうか?
法律に明記されているのでしょうか?
法律には書かれていませんが、判例に明記されています。(図②参照)

そうなのですね。
ハラスメントが起こらない社風の構築をぜひお願いいたします。(図③参照)

こんなことを言って良いのかわかりませんが、ハラスメントの被害者側にも責任があるように見受けられる場合があるのですがいかがでしょうか?
確かに、上司が何度指導しても業務ができるようにならないため、熱血指導がエスカレートしてパワハラに発展するケースもあります。
指導とパワハラの線引きが難しい場合もありませんか?
あります。
本人の業務遂行能力に問題がある場合に加えて、いじめられやすいタイプの人間もいます。
人材教育は難しいのですが、日本帝国海軍の山本五十六大将という軍人の、部下の育成指導についての言葉をご存知でしょうか?
いいえ。
「やって見せ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ」
なるほど…
これは本当に名言で、1回言われてすぐに出来る人は1000人に1人、10回言われて出来る人は100人に1人、つまり、ほとんどの人は100~1000回言われないと出来るようにならないのです。
人材育成は根気が要りますね。
そうですね。根気強く頑張りましょう。
ちなみに、具体的なハラスメント対策を教えてもらいたいのですが。
ハラスメント対策には 、
①ハラスメント教育による予防に加えて、
②早期発見が重要です。
教育は定期的に、ハラスメント研修をすれば良いでしょうか?
その通りです。
早期発見はどうすれば良いでしょうか?
ハラスメント相談窓口を設置することが最も重要です。
加えて、ストレスチェックと保健師の活用という方法があります。
相談窓口の設置はどうすれば良いでしょうか?
相談窓口には、内部相談窓口と外部相談窓口があります。
会社内部でやるかアウトソーシングするか考える必要があるのですね。
そうです。内部相談窓口の設置例として、図4があります。(図④参照)

なるほど。
ちなみに、人事部長が部下からパワハラで訴えられた事例がありました。
このような企業様では、アウトソーシングした方がいいでしょうね 。
そうですね。
外部相談窓口の設置例としては、
①弁護士や社会保険労務士の事務所
②ハラスメント対策のコンサルティング会社
③メンタルヘルス、健康相談、ハラスメントなど
④相談窓口の代行を専門に行っている企業
との業務委託契約を結ぶ方法があります。
なるほど。検討いたします。
ハラスメントの早期発見としては、実はストレスチェックも有効です。
ストレスチェックは昨年度から年に一度実施しています。
そこから高ストレス者として上がってくる方の中に、ハラスメントの被害者がいる場合は会社が気づく機会になりますね。
分かりました。
ハラスメントの早期発見については、保健師の活用という方法も有効です。
保健師というのは?
「4つのケア」という言葉をご存知ですか?
いいえ。
労働衛生の世界では、2006年に厚生労働省が出したメンタルヘルスケアの社内体制構築モデルが標準的な考え方です。
図5の4つのケアにより、メンタル不調を早期発見することが可能になります。
これはハラスメントに限らず、全てのメンタル不調者を対象としていますが。(図⑤参照)

セルフケアというのは労働者本人が気づくこと、ラインケアというのは上司が気づくことですよね。
その通りです。事業場内産業衛生スタッフによるケアというのは、保健師を雇用して、メンタル不調の相談窓口を設置することを意味します。
うちの会社の規模では、保健師の常勤雇用は難しいのですが…
その場合は、外部から保健師を派遣してもらい、産業医と一緒に労働者のメンタルケアにあたってもらうと良いと思います。
なかなか大変そうですね。
ハラスメント対策は経費ばかりかかり、直接売上につながらないので、後手に回る領域なのですが、「企業は人なり」です。
企業活動の中心は人で、利益の源泉も人ですから、そこに目を向けることが企業経営には極めて重要なのではないかと思います。
人を大切にする経営を目指します。(図⑥参照)

ハラスメントには、実はかなり種類があり、パワハラ、セクハラに加 えて、アルコールラスメント、モラルハラスメントなど30種類以上あるとされています。
ドクターハラスメントというのもあるのですよ。
何ですか?
医師が患者に対して、威圧的に振舞うことです。
なるほど。
ペイシェントハラスメントもあるのですよ。
患者が医師に対して攻撃することですか?
患者に刺された医師もいます。
大変ですね…
セクハラについて、社会学者の水無田気流(みなしたきりう)教授(国学院大学経済学部)が、「ヒラメカレイ型管理職」という概念で問題点を指摘されています。
ほう。
「上しか見ないで下の者の不満に気づかない上司では人材管理に行き詰まる可能性がある。」ということです。
でもまあそれは、中間管理職の宿命ですけどね…
ハラスメントを社風として許さないトップと、部下のハラスメントに目を光らせる中間管理職が両輪ですね。
結局、倫理と人間性の問題に帰着するのですね。
色々申し上げましたが、最も重要なことは「会社というのは生産性を上げて質の良いサービスを生み出す場である。」という基本です。
従業員同士がもめている場合ではないですよね。
「感謝力」の向上が究極の対策なのですよ。
感謝力?
ハラスメントが起きる職場というのは、感謝力が低い人の集まりなのです。
そうなのですか?
長年労務問題に取り組んでこられた中川清徳社会保険労務士が考える「感謝力」の向上とはどういうことなのかが図7にあります。(図⑦参照)

なるほど。
職場の感謝力を上げる仕組みを構築することが、究極のハラスメント予防方法です。